第20回「中小企業優秀新技術・新製品賞」

審査委員長

吉川 弘之
     (産業技術総合研究所 理事長)
吉川弘之
 中小企業優秀新技術・新製品賞は、今回で20回目を迎えます。
 応募作品のいずれもアイデアや工夫にあふれておりまして、特に上位100件ほどは、それぞれの分野で高い評価に値するレベルのものばかりでありました。
 審査に当たります私たちも、優れた作品の中からさらに優れたものを選ぶことは、大変な喜びでもあるのですが、同時に大変苦労もせざるを得なかったということも申し上げておきます。
 長官賞の作品は、原理は古くから知られていて大変おもしろいアイデアであり、実験室レベルで長く研究されてきました。とても実用化はできないと言われていたのですが、数多くの工夫の積み重ねによりまして、世界で初めて工場レベルで実用化したもので大変すばらしい。
 「産学官連携特別賞」は4件表彰させていただきました。現在、基礎研究が非常に重要視されており、産学官連携が推奨されているのですが、なかなか進まないと言われながら、このように私どもの分野で静かに広がっていることは大変喜ばしい。
 もう1つの特別賞に「技術経営特別賞」がございますが、今回は4社が受賞されました。研究開発と企業の安定経営を両立することは、世の中で実際に役立つものをつくる必要条件です。これは企業の成長、飛躍にとって欠くことのできない、いわば車の両輪ですが、ここで改めて経営者の努力に敬意を表する次第です。
 私自身、本賞を審査する中で、改めて皆さまの努力の大きさと貴重さを認識しました。いずれも経済環境が大変厳しい状況の中で研究開発を積み重ね、独創性があり、優れたものを創り出されました。
 我が国が発展してきた歴史と重ね合わせてみますと、これは偶然ではなく伝統的な一つの流れだと考えることもできます。
 現在「技術の日本」と言われる根拠には、長い歴史があるのです。1920年代から30年代、大正から昭和初期にかけては、まだ産業技術という概念すらはっきりしなかったのですが、その中で、大河内正敏先生は理化学研究所を大きく発展されました。
 これは原子核研究という物理の最先端の研究所ですが、同時に工学部門をおつくりになりまして、基礎研究をどのようにして具体的に産業に活用し、産業を発展させるかということに心を砕かれ、現在でいえば多くの「ベンチャービジネス」をつくられました。
 やや時代が下って、真島正市先生は非常に身近な、すべての現象を、計測を通じて体系化し技術として生かされるという、今から思うと非常に哲学的な発想ですが、いわば多様な計測を展開されました。
 また、東京大学と理研におられた大越諄先生は私が習った先生ですが、生産というまさに現場の仕事を学問にすることに努力をされました。
 当時、大越先生のお話を伺うと「現場でやるような仕事で学問になるはずはない。素粒子のほうが良い」と馬鹿にされる中で、大越先生はじっと耐えて、見事に「生産工学」を樹立し学問化して、生産技術の専門家を育てました。それは戦後に花を咲かせて、高度経済成長の主役となりました。
 1950年代の飛躍が、それ以前に培われたこのような様々なことを背景にしていることを考えたとき、やはり皆さんの今日の展開というのも、日本の中に脈脈と流れている大きな考え方が背後にあることがわかります。
 最近は「モノづくり」と一口に言いますが、それはただ単にものをつくるという意味ではなく、その背後にある知識体系をどのように活用するのか、社会にとっての生産をどのように位置づけるのかという、大変大きな考え方が背後にあるわけです。
 皆さんはまさにそれらを受けて、現在に花を咲かせている「選手」なのだと私たちは考えている次第です。
 現在に至って、私たちは改めて研究のスタイルを考えています。研究をやっているだけではだめで、大学の研究がどのようにして社会に出ていくのかということを考えているわけですが、大変苦心して出そう出そうとするけれども、なかなか出ないのです。
 そのような中で「本格研究」、すなわち最初の非常に基礎的な研究を応用にまで持っていく研究をやろうと努力しております。
 しかし、研究しても簡単には応用はできません。一体なぜなのかと国際的に議論しているところですが、新しい研究のフェーズが必要だと言われ始めました。
 そして「本格研究」と呼ばれる、基礎から応用まで一貫した研究の中に、さらに付け加えるべき「第3の研究分野」として、まさに皆さまの日々の努力が存在しており、ここが連続したときに初めて、基礎的な科学が社会の役に立つ形が実現します。
 環境技術時代と言われる中で、新しい技術が求められています。一方で、たくさんの基礎的な知識が増えています。最近の生物化学でもいろいろな知識がどんどん増えています。
 しかし、それが本当の意味で時代に応え、人々の役に立つ技術となるためには、本当に皆さまの努力がなければ、これはできないと痛感します。
 世界の中で技術立国ということを保持するためにも、独立自営の中堅・中小企業の皆さまのお仕事というのは大変重要になるわけですから、これからもどんどん新しい技術、製品を開発していただきたいと、心から祈念する次第です。
 受賞者の皆さまの今後の発展と、主催者関係各位の変わらぬ努力をお願いいたしまして、簡単ではございますが、審査講評とさせていただきます。

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