第25回「中小企業優秀新技術・新製品賞」

審査委員長

吉川 弘之
(科学技術振興機構 研究開発戦略センター長)
吉川弘之
応募総数は420件
 「中小企業優秀新技術・新製品賞」は25回目を迎えました。
 今回の応募は「一般部門」352件、「ソフトウエア部門」68件、2部門の合計で420件でした。この賞は独立系中堅・中小企業の新技術・新製品を対象としております。応募件数がこれほどの賞は、国内ではあまり例がなく、水準・注目度の高い賞と自負しております。
 審査は、「優秀性」、「独創性」、「市場性」という、3つの観点で行い、さらに「中小企業らしさ」、「環境に対する配慮」、「社会的有用性」なども考慮に入れ、審査しております。一般部門は4回、ソフトウエア部門はデモンストレーションを含め3回にわたり議論を重ね、最終段階では、実施調査・ユーザーヒアリング等も行ないました。これらの専門審査に加えて、審査委員会2回の審議を経て、本日表彰の39作品の入賞を決定しました。
 応募作品はどれもアイデアや工夫に溢れ、特に上位100件ほどは、それぞれの分野で高い評価に値するレベルのものばかりであります。惜しくも入選にもれた作品の中にも、将来が楽しみな作品が多数あったことを申し添えます。
 これはひとえに、本日表彰される皆様はじめ、これまで本賞に応募チャレンジされてこられた企業の方々の、技術開発に注がれている熱意と、たゆまぬ努力の現れであり、わが国の技術振興と産業経済の発展に大きく貢献されているものと、敬意を表する次第です。厳しい経済環境と競争の中で、営々と研究開発を積み重ね、高度かつ独創的な技術・アイデアにより、優れた作品を生み出されていることに、いつもながら感銘を受けております。

受賞作品の特徴
 今回入賞された作品の特徴を一言で表すのはなかなか困難ですが、一般部門では、大学との共同研究・開発を活用した作品や従来技術の改良にとどまらず、発想を転換した革新的な技術や、実用性・安全性の向上を意識した製品が増えてきたと感じました。
 また、高い技術力を有し、ニッチな分野に特化した社会的意義の高い作品も目立ちました。
 長官賞作品は「石英マイクロチューブ・キャピラリ」です。従来、石英化は困難とされていましたが、本作品は、紫外線の透過性に優れ、キャピラリ分析に大きな変革をもたらすと期待される独創的な製品です。今後は分析だけではなく、紫外線を通す利点を活かしたセンサーなど多様な応用、市場拡大が期待されます。
 ソフトウエア部門では、時代のニーズを反映したスマートフォン向けソフトやiPad等タブレットを使用する業務ソフトの応募が多かったように思われます。
 
産学官連携特別賞について
 産学官連携特別賞は、7名の方を表彰させていただきました。例えば優秀賞の「柿渋含有抗ノロウイルス アルタンノロエース」は、柿渋という身近な素材を原料としつつも、市場ニーズを的確にとらえた中小企業らしいアイデアと言え、広島大学との共同研究で製品化されました。

環境貢献特別賞について
 環境貢献特別賞は、今回は3社が受賞されました。
 この賞は、部門表彰作品のなかで、特に環境に貢献すると認められる作品を併せて表彰するものです。今回は、小水力を活用した発電機や、汚水の浄化に資する作品が受賞されました。

新たな技術開発の担い手
 さて、失われた20年と言われる不況からの脱却を図り、金融緩和が行われ、経済復興への期待が高まっています。
 しかし、経済復興には金融だけではなく、実体経済の復興が必須です。製造業を中心とする産業が、この政策にいかに応答するのかが責務と考えます。
 従来型の産業の強化では、うまくいかないのです。
 世界情勢が大きく変わったのです。1980年、1990年代の高度経済成長の背後には製造業の飛躍、拡大がありましたが、当時の競争のサプライヤーとマーケットは、欧米だけであり、人口は5億から、日本を入れても6億人でした。
 ところが、失われた20年の間に、新興工業国、アジアはもちろん南米、ロシア、中国、アフリカですら経済発展してきました。今や世界人口70億人を相手に戦う時代なのです。競争相手が十数倍に増えたのです。
 反面、マーケットが大きくなったともいえます。極めて大きなチャンスです。このチャンスをどうとらえるか。製造業の技術力が大切であると私は考えます。技術力がこの新しいマーケットに対応することです。
 これからは製造業の人にも、新興国には何が売れるのかという感受性が必要です。
 日本と似通った先進欧米諸国ではなく、新興国という、これまでとは全く異質の相手に対して、そのニーズにあった技術開発力が求められています。これからは、従来のような大企業ではなく、過去の成功体験にとらわれない中小企業がキーになると思います。

科学技術による困難克服を
 東日本大震災から2年が経ちました。復興には必ずしも、道筋が見えていません。今後も被災地の復興に資する新しい技術や製品、放射能汚染を軽減する技術の開発が求められますが、加えて各国との競争の中で技術立国を保持するためにも、新しい技術の開発の重要性は、従来にも増して大きくなっています。
 ここにお集まりのような、独立・自営の中堅・中小企業の皆様に、次々と新技術や製品を開発いただくことこそが技術シーズの具現化であり、国民の幸福追求につながるものと考えます。
 受賞者の皆様のさらなるご発展と、主催者・関係各位の変わらぬご努力をお願いいたしまして、簡単ではございますが、審査講評とさせていただきます。


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