第26回「中小企業優秀新技術・新製品賞」

審査委員長

吉川 弘之
(科学技術振興機構 研究開発戦略センター長)
吉川弘之
 まずは本日受賞された方々に、心からお祝いを申し上げます。おめでとうございます。
 「中小企業優秀新技術・新製品賞」は26回目を迎えました。
 今回の応募は「一般部門」254件、「ソフトウエア部門」71件、2部門の合計で325件でした。この賞は、独立系中堅・中小企業の新技術・新製品を対象としております。応募件数がこれほど多い賞は、国内ではあまり例がなく、水準・注目度の高い賞と自負しております。
 審査は、「優秀性」、「独創性」、「市場性」という、3つの観点でおこない、さらに「中小企業らしさ」、「環境に対する配慮」、「社会的有用性」なども考慮に入れ、審査しております。
 一般部門は4回、ソフトウエア部門はデモンストレーションを含め3回にわたり議論を重ね、最終段階では、実地調査・ユーザーヒアリング等も行いました。これらの専門審査に加えて、審査委員会2回の審議を経て、本日表彰の37作品の入賞を決定しました。
 応募作品はどれもアイデアや工夫に溢れ、特に上位100件ほどは、それぞれの分野で高い評価に値するレベルのものばかりであります。惜しくも入選にもれた作品の中にも、将来が楽しみな作品が多数あったことを申し添えます。
 これはひとえに、本日表彰される皆様はじめ、これまで本賞に応募チャレンジされてこられた企業の方々の、技術開発にそそがれている熱意とたゆまぬ努力の現れであり、わが国の技術振興と産業経済の発展に大きく貢献されているものと、敬意を表する次第です。
 厳しい経済環境と競争の中で、営々と研究開発を積み重ね、高度かつ独創的な技術・アイデアにより、優れた作品を生み出されていることに、いつもながら感銘を受けております。

 今回入賞された作品の特徴を一言で表すのはなかなか困難ですが、一般部門では、大学との共同研究・開発を活用した作品や従来技術の改良にとどまらず、発想を転換した革新的な技術や、実用性・安全性の向上を意識した製品が増えてきたと感じました。
 また、高い技術力を有し、ニッチな分野に特化した社会的意義の高い作品も目立ちました。
 長官賞作品は「マイクロハクマク圧力センサ」です。10年前から公的助成金を利用し、大阪府立産業技術総合研究所とも協業・研究を重ねてこられた成果です。高い精度の真空内圧力計測を可能とするセンサーを開発しました。電子デバイス、半導体製造分野など多方面に大きな変革をもたらすと期待される独創的な製品です。
 ソフトウエア部門では、スマートフォンなど非PC向けのプロダクトが目立ちました。
 優秀賞「ロイロノート」は、iPadを用いた学校教育の補助ツールです。生徒が自らデータを関連付け、学ぶ手段を提供します。こうした教育現場のITツールのほか、予防注射の接種タイミングを知らせ、診療所での予約にもリンクさせるシステム「ちゅうしゃうっ太郎」などユニークな新製品がありました。

 産学官連携特別賞については、3名の方を表彰させていただきました。
 例えば「洗浄吸引カテーテル」は、大阪大学との医工連携の成果です。医師のニーズを的確に捉えて製品・実用化した、患者に優しい器具です。

 もう一つの特別賞である環境貢献特別賞は、5件が受賞されました。この賞は、部門表彰作品のなかで、特に環境に貢献すると認められる作品を併せて表彰するものです。
 優秀賞の「さびで錆を制す反応性塗料パティーナロック」は橋梁・鉄塔などの鉄鋼インフラの腐食劣化を食い止めるエコロジーな防食処理剤です。果敢に挑戦した製品であり、高度経済成長期に建設された多くの社会資本構造物が腐食劣化して行くなか、その寿命を延伸する防食対策や維持に資する製品です。

 こうしていろいろ拝見して、つくづく思うことは、いわゆるモノづくりが世界的な話題になって大いに盛り上がっていることです。モノづくりが高度経済成長を支えてきたことはいうまでもないことです。
 新興国、発展途上国ではプロダクトが必要です。これらの国々では、従来の先進国が経てきたような大量生産が行われていますが、今、見直されているのは米国、英国や欧州など先進国でのモノづくりです。
 単に品質が良いだけではなく、安全・安心、環境といった様々な要素に配慮したモノづくりには、多様な問題の解決が必要です。そうした課題に対応するモノづくりは重要なことです。これらの分野には先端科学技術の応用ばかりでなく、現実の生活者の目線で捉えた工夫が必要です。多くを、優秀な中小企業の集団が解決しているのです。団結した集団というのは開発の力を大きく高めるものです。
 今回の受賞製品・技術の多くも、そうした団結した集団が熱意を注いで開発したものに他なりません。皆さんが、不断の努力のもとで実現されたものです

 東日本大震災から3年が経ちました。私どもはこの未曽有の自然災害を忘れることはありません。一部に明るいニュースもありますが、住宅・産業再生など生活、地域の再建とともに住民の方々の心のケアも問題となっています。
 今後も被災地の復興に資する新しい技術や製品、放射能汚染を軽減する技術の開発が求められますが、加えて世界の競争の中で技術立国を保持するためにも、新しい技術の開発の重要性は、従来にも増して大きくなっています。そうした中で結果的に世界的に優秀な製品も生まれてくることでしょう。
 ここにお集まりのような、独立・自営の中堅・中小企業の皆様に、次から次へと、どんどん新しい技術や製品を開発いただきたいと存じます。
 受賞者の皆様のさらなるご発展と、主催者・関係各位の変わらぬご努力をお願いいたしまして、簡単ではございますが、審査講評とさせていただきます。


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