第27回「中小企業優秀新技術・新製品賞」

審査委員

橋本 久義
(政策研究大学院大学 名誉教授)
橋本久義
 受賞者の皆様、誠におめでとうございます。心よりお祝いを申し上げます。  第27回「中小企業優秀新技術・新製品賞」には「一般部門」279作品、「ソフトウエア部門」52作品の応募がありました。総じてレベルが高く、各分野で高く評価されている優れた技術・製品群でした。それだけに審査委員の選考も困難を極めました。残念ながら選に漏れた作品もたくさんありますが、さらなる工夫、改善を重ねることで次回以降に入選のチャンスがあると思います。
 本賞は「優秀性」「独創性」「市場性」の三つの観点をもとに、「中小企業らしさ」「環境に対する配慮」「社会的有用性」といった多様な観点も考慮して審査いたしました。一般部門、ソフトウエア部門のそれぞれの専門審査委員会で数回にわたって議論を重ね、実地調査やユーザーヒアリングも実施し、部門横断的な見地から審査委員会の審議を経て37作品の入賞を決定いたしました。
 中小企業庁長官賞は非接触吸着盤「ノンコンタクトチャッキング」が受賞いたしました。多孔質カーボンに給気して表面全体に空気膜を形成し、ガラス基板などの薄いワークを浮上させるとともに、かつ吸引して釣り合いを取って把持、搬送する。同志社大学と連携して開発し、半導体ウェハー製造に必須の製品として期待されています。また受賞作品の特徴を一言で表すのはなかなか難しいですが、一般部門では放射線の検出・除去技術や医療・生活関連製品が多かったと感じました。
 ソフトウエア部門はここ数年の傾向ですが、タブレット端末やスマートフォン向けアプリケーションソフトウエア、クラウドサービスが目立っていました。例えば優秀賞の「Teachme Biz(ティーチミー・ビズ)」は、スマホの双方向のやりとりで業務用マニュアルを簡便に作成し、情報共有して生産性向上に役立てるものです。優良賞の「音で簡単データ交換アプリ Zeetle(ジートル)」は、スマホのデータ交換に音を利用するユニークなサービスです。要素技術の独創性だけではなく、ビジネス全体の戦略も優れています。
 産学官連携特別賞は6名の先生方を表彰させていただきました。例えばソフトウエア部門奨励賞の「骨粗鬆症判定支援ソフト NEOOSTEO(ネオオステオ)」は、松本歯科大学と連携して開発したもので、歯科診断でのデジタルパノラマX線画像から骨粗鬆症を予備判定できる優れたソフトです。また環境貢献特別賞は4作品が受賞されました。一般部門優秀賞の「放射性汚染物質の吸着除染材料の開発と製造」は、放射線グラフト重合技術を応用し、ナイロン繊維を吸着除染材料にしたもので、セシウムやストロンチウムを選択的に吸着できます。原子力発電所構内の高濃度放射性汚染水対策で大いに役に立ちそうです。
 私は通商産業省(現・経済産業省)に籍を置いていた時も、こうした中小企業の研究開発の審査をさせていただいていました。当時、ある社長が「私たちの最大の喜びは、お客様の『よくやってくれた。助かった』という言葉。これが研究開発の励み」と言っておられた。また旋盤工をしながら小説を書いていた作家の小関智弘さんが「無心に、お客様のために一生懸命、単純な仕事をしている時に開発のアイデアが浮かぶ」とおっしゃっていたことも思い出しました。やはり“お客様のために”という気持ちが、日本企業の強みです。今回の受賞作品もお客様にどうしたら喜んでもらえるのかを考えて開発したものばかりだと思います。
 2011年3月の東日本大震災から4年がたちましたが、私たちはこの未曽有の自然災害を忘れることはありません。今回の受賞作品にもありますが、これからも放射能汚染を検出する技術、被災地の復興に資する技術や製品などの開発が求められます。またグローバル競争が激化する中、新技術の開発の重要性も高まっています。
 日本の中小企業は研究開発を積み重ね、独創的な技術、優れた作品を生み出してきました。今回の受賞作品も経営者はもとより、社員一人一人の創意工夫、技術開発にかける情熱、精進の成果だと思います。受賞者の皆様にはこれからも新技術・新製品をつくり続けていただき、わが国産業界の先陣を切っていただきたい。皆様のさらなるご発展と、主催・関係各位の変わらぬご努力をお願いいたしまして、簡単ではございますが、審査講評とさせていただきます。



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