第29回「中小企業優秀新技術・新製品賞」

審査委員長

新井 民夫
(東京大学 名誉教授)
新井 民夫
 受賞者の皆様、誠におめでとうございます。心よりお祝いを申し上げます。
 第29回「中小企業優秀新技術・新製品賞」には、一般部門263作品、ソフトウエア部門55作品の合計318作品のご応募をいただきました。応募作品はそれぞれの分野でレベルが高い技術・製品で、かつ中小企業らしい工夫が凝らされていました。応募件数が前回よりも2割程度増えたこともあり、入賞は難しく、審査委員の選考も困難を極めました。今回、残念ながら選に漏れた作品の中にも、さらなる工夫・改善を重ねて次回以降の入賞に結び付く作品もあろうかと思います。
 本賞は「優秀性」「独創性」「市場性」の大きく3つの観点をもとに、「中小企業らしさ」「環境に対する配慮」「社会的有用性」など社会の要請を考慮に入れて審査しています。一般部門、ソフトウエア部門のそれぞれの専門審査委員会で数回に亘り議論を重ね、最終段階では実地調査・ユーザーヒアリングなども行ないます。専門審査に加えて、部門横断的な見地から審査委員会の審議を経て、37作品の入賞を決定しました。
 中小企業庁長官賞は「超精密成形平面研削盤 SGC-630PREMIUM」が受賞しました。真直度精度を10倍、剛性を25%向上し、世界最高精度を実現したものであり、長官賞にふさわしい作品です。優秀賞は10作品を表彰しました。例えば「散薬調剤ロボット『DimeRo(ディメロ)』」は、調剤を全自動化した完成度の高いシステムで、すでに200台以上の販売実績があります。入賞作品の総評を一言で申し上げるのは難しいですが、一般部門では長年培ってきた技術を突き詰め、工夫を加えて、高いレベルに仕上げた製品が目に付きました。優秀な新技術・新製品は一朝一夕に生み出されるものではなく、弛まぬ努力と研鑽が結実するものだと改めて感じている次第です。分野は医療・福祉関連の製品が目立ちました。昨今の社会ニーズを反映したものと言えましょう。
 ソフトウエア部門には、幅広い分野で興味深い作品が多く集まり、ユーザーへの訴求力や将来性において優れた作品が入賞しました。優秀賞の「Smart360」は、360度パノラマ動画・写真に音声・動画などの情報をユーザー自ら簡単に付加できます。インターネットを通じた情報発信のレベルアップに役立つと信じています。
 産学官連携特別賞は7名を表彰しました。例えば一般部門優秀賞の「小型高性能の旋回流式気液分離器」は、東京大学との連携成果です。また同じく一般部門優秀賞の「認知症を早期発見する『MCIスクリーニング検査』」は、筑波大学との連携成果です。環境貢献特別賞は1作品を表彰しました。一般部門優秀賞の「ヒートポンプ排熱利用省エネ型低露点除湿機」は、エネルギー効率とCO2を40%削減し、ユーザーから高い評価が寄せられています。
 私はロボット、自動組み立て、生産システムの研究者でしたが、製造業が提供する価値を最大化するにはサービスのことを学ばなければいけないと、サービス工学を提唱しました。2012年にサービス学会を設立し、初代会長を務めました。今やモノとコトとが分離されずに、同様に扱われる時代になりました。モノもコトもユーザーが使うことによって価値を生み出しています。その意味で、ユーザーを意識した開発を進めていただきたいと願っています。
 受賞者の皆様は、新技術・新製品が高く評価されたことでお喜びのことと存じます。その喜びをエネルギーとして、自社のみならず、他社の技術・製品にも目を向けて、お知り合いの方々に紹介していただきたい。それは受賞者の義務であり、権利でもあります。
 受賞作品は経営者はもとより、社員の皆様の技術開発に懸ける情熱と精進の賜物であり、あらためて敬意を表するとともに、これからも新しい技術・製品を創り続け、わが国産業界をリードしていただくことを切に期待するものです。最後になりましたが、受賞者の皆様のさらなるご発展と、主催・関係各位の変わらぬご努力をお願いいたしまして、簡単ではございますが、審査講評とさせていただきます。



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