第30回「中小企業優秀新技術・新製品賞」

審査委員長

新井 民夫
(東京大学 名誉教授)
新井 民夫
 受賞者の皆様、誠におめでとうございます。心よりお祝いを申し上げます。例年と比較して、質の高い作品が粒ぞろいであったと感じております。多様な分野で、中小企業らしい着眼点で高い技術力を駆使した作品が多く、わたしども審査委員の選考も困難を極めるものになりました。残念ながら、僅差で選に漏れた作品もあります。さらなる工夫や改善により、次回以降の入賞に繋げていただければと思います。
 本賞は「優秀性」「独創性」「市場性」の大きく3つの観点をもとに、「中小企業らしさ」「環境に対する配慮」「社会的有用性」など社会の要請を考慮に入れて審査しています。
 一般部門、ソフトウエア部門それぞれの専門審査委員会で議論を重ね、加えて、部門横断的な見地から審査委員会の審議を経て、本日表彰の38作品の入賞を決定しました。
 中小企業庁長官賞は「高精度デジタル方式FM同期放送送信機」が受賞いたしました。これは、GPS信号を用いて受信信号の位相調整をデジタル化することにより、干渉エリアでの音質問題を解決し、同一周波数によるシームレスな受信を実現しています。国土強靭化(ナショナル・レジリエンス)にも資する作品です。周波数有効利用の観点から、情報通信政策に貢献する技術とも言え、長官賞にふさわしい作品だと思います。
 優秀賞「次世代人工皮膚 Advanced Skin」は、表皮4層・真皮2層のヒト皮膚組織構造を再現した人工皮膚モデルです。天然の皮膚構造に近い真皮構造を再現しており、従来型の人工皮膚ではなしえなかった、表皮層と真皮層に対する解析を分けて行うことができる優秀かつ独創的な作品です。理研ベンチャー認定企業であり、高度な研究開発の成果を社会に還元するものです。
 一般部門全般について申し上げますと、日本の工業製品として先ず頭に浮かぶ産業機械、電気機械、精密機械などが、引続き受賞作品の多くを占めています。自社の得意分野を深く掘り下げ、他社に真似のできない水準に磨き上げられた作品が多く見られました。
 また、時代の要請でもあり、成長分野でもある医療、介護、防災関連の作品も目に付きました。培ってきた技術を活かして、事業領域の異なる分野にチャレンジしており、印象に残りました。今回の受賞が、今後の展開に役立つことを願っています。
 ソフトウエア部門では、ユーザーのニーズを的確に捉えた作品が入賞を果たしています。優秀賞の「画像軽量化ソリューション『Smart JPEG』」は、人間の目には画質の差が感知されない範囲で、画像を自動的に圧縮するソフトウエアです。レスポンスタイムの改善に繋がり、インターネット上でのユーザー体験やコンバージョン率の向上に役立ちます。また、同じく優秀賞の「Webデータベース『プリザンター』」は、オープンソースとして開発された業務管理アプリケーションです。基幹業務の連携はもちろん、細かな業務についても一般的なExcel等による管理と比較して、大幅な効率化を実現しています。
 産学官連携特別賞は、2名の方を表彰させていただきました。一般部門優秀賞の「メラ遠心血液ポンプシステム」は正常な心臓や肺機能が損なわれた患者の血液循環を補助する装置で、装置の中核である遠心血液ポンプは、産業技術総合研究所との共同研究の成果です。
 環境貢献特別賞は、2作品を表彰させていただきました。一般部門優秀賞の「泡による高効率、環境対応型塗装集塵機」は、水溶性VOCを40%削減する製品です。消費電力に加え、産業廃棄物、騒音、排水処理の費用削減にも効果を発揮します。
 ここにお集まりいただいた受賞者の皆様は、自社の技術・製品が高く評価されたことでお喜びのことと存じます。その喜びをエネルギーとして、さらなる高みを目指して、技術開発に取組んでいただきたい。また、自社のみならず、他社が受賞した新技術・新製品に目を向けていただき、是非お知り合いの方々に紹介していただきたいと思います。それは受賞者の義務であり、権利でもあります。
 私は組立ロボットやフレキシブル生産システムの研究開発を長く続けてきました。良い製品が出来たと思っても、そうそう売れるわけではありません。2000年からはモノを作るだけでなく、それがどの様に使われるか、如何に価値を生み出しているかが重要と考え、マーケティングの考えを取り入れ、サービスの研究を進めてまいりました。今回の受賞作品は全体として、プロダクトアウトではなく、マーケットインの思想が強く反映されている、すなわち、利用者・消費者の視点に立つ新技術が増えてきたと感じております。
 得意とする技術を徹底的に深掘りし、ユーザーの求める価値を的確に捉え、それを実現していくことは、価値づくり企業として成長を続ける王道です。皆様のような、組織の柔軟性が高く、意思決定が早い中小企業が得意とするところではないかと思います。
 最後になりましたが、受賞者の皆様のさらなるご発展と、主催・関係各位の変わらぬご努力をお願いいたしまして、簡単ではございますが、審査講評とさせていただきます。



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